外はいつの間にか雨が降っていたらしい。

 有の髪は少し雨に打たれ、濡れて乱れていた。

 いつもより蒼い貌に幾筋かの前髪が這う。

 その姿は息を呑む程、美しかった。



『あ…』


 ふたりはお互いを認め、同時に驚きの声を上げる。


「なんだ…未だ居たの」 
 先に口を開いたのは有だった。

 姫乃は余りのことに、言葉を搾り出すどころか、ここに居る有が本物かどうか信じられず、夢なんじゃないかと考えたほどだった。

「…荷物、取りに来たんだけど」


 姫乃ははっとして、抱きしめていた道着を慌てて後ろ手に隠した。


「…それ。今隠したの、俺の?」


 気付かれた―…!!

 私が先輩の道着を抱きしめて泣いていたことを。

 よりによって本人に。



 かああぁぁっと姫乃の顔は一瞬で紅潮した。