「ねー 有、日曜日いいでしょぉ?」

「うるせえな…んなとこまでついてくんな」


 放課後、柔道場を掃除していた姫乃の耳に、甘えた女の人の声と、苛々した有の声が飛び込んできた。


「どうせ、日曜ヒマなんでしょ? いーじゃない、付き合ってよ」

「例えヒマでもお断り」

「ええ〜っ!! 行こうよお」

「ああ、もう出てけよ」


 と云って有は、女の鼻先でぴしゃりと柔道場の扉を閉め、内側からがちゃっと鍵を掛けてしまった。


「んも〜っ! ちょっとそこのアナタ、ここ開けてよっ」

「開けなくていいから」


 3年生ふたりから睨まれ、姫乃はどうしていいのか判らず、暫し立ち尽くしていた。


「絶対、開けんなよ」

 と、有は言い含めて部室へと入っていってしまった。




 …あのひと、知ってる。
 3年の松本 梨絵サン。


 …上領先輩の、元カノだ。








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