制服のボタンは、全てがきちんと残っていた。


 ゆっくりと、有は胸元に手をやる。

 
 そして、二番目のボタンを掴むと、ぐいっと引っ張った。


 ぶちっ

 と、音がすると呆気なくボタンは有の手のなかへ。

「ほら」


 有は、無造作に姫乃の前に手を差し出した。


 ―――ころん。


 姫乃のてのひらに、鈍い光を放つ燻し銀の、彼女にとっては宝石より価値のある、宝物が転がった。


「じゃあな」


 姫乃の頭を軽くぽんっと叩くと、有は軽い足取りで中庭へと消えていった。


 そのすらりとした後ろ姿に、姫乃はお礼を伝えるだけで、精一杯だった。



 ―…勇気を出して、よかった…!



 とめどなく溢れる涙に濡れた掌に、有の瞳と同じ色をした大切な宝物が、しっかりと握られていた―――――――――。






.