「おかあさん、おはよっ」

 キッチンでお味噌汁用の葱を切る母に、姫乃は元気に声を掛けた。

「あら、ひいちゃん。おはよ。今日は流石に早起きねえ」

「うんっ。珍しく目覚ましより先に目が覚めた」

「気合い入ってるなぁ」



 お母さんが、甘くて温かい卵焼きを私の口に放り込む。んん〜美味し。

 …何だか急激にお腹空いてきたぞ。

 でもでも、今日は朝食よりも身仕度優先でいかなくちゃ。

 何てったって、中学の入学式だもん!



「ごはん食べたいけど、先にシャワー浴びてくるぅ!」

「はいはい、いってらっしゃい」


 ぱたぱたと浴室へ向かって駆ける我が娘を、瑛子は笑い乍ら見送り、再び葱を切り始めた。





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