――…甘かった。


 2月13日土曜日。


 朝早く登校したものの、案の定先輩の靴箱はチョコらしきものの山。

 ―…まあ、食べ物を靴箱に入れるのもね〜…なんて、思わず負け惜しみもこめて突っ込んでみたりして。


 休み時間も。

 3年生の教室に行ってみるも、先輩の教室の出入口からは女の子が溢れ出していて、小さな私ですら入る隙間もない。

 廊下には、きゃあきゃあと甲高い声が満ち満ちている。

 先輩の影すら、見えない。



 ―――あーあ。


 頑張ったんだけどな、ケーキ。


 やっぱり渡せないの、かな。

 そう思うと、手のなかの茶色い箱がいじらしくも可哀相で、涙がひとつ、零れて落ちた。




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