「なにそれ、超ムカつく!!」


 私たちはそのまま美術室で語り合っていた。

 北向きのこの部屋の窓から差し込む、薄い膜のかかったような夕陽でさえ、泣き腫らした眼には染みて辛い。


「上領先輩と松本さんの間に何があったのか、あるのか、そんなの知ったこっちゃないけど、松本さんが姫乃を貶めるのは許せん!!」


 瑠璃は顔に似合わない歯ぎしりをぎりぎりとする。


「あ~なんか上領先輩にも腹立ってきた! 電話して呼ばなくて良かったわ」

 忌々しそうにケータイを机の上に放り出す。


「先輩に電話…?」


 はっとして瑠璃は、暫く考えてからバツが悪そうに切り出した。


「先輩からね、頼まれてたの。自分が傍に居ることで姫乃が厭な想いをさせられたり、あんたが別のオトコに言い寄られたりなんてことがあったら知らせてくれ、って云われて。ケータイの番号とか渡されたんだ」


 呆然としつつも、瑠璃の言葉をなんとか飲み下そうとする。


 …先輩が?

 そんなことを?



 どうして?





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