「ユウが抱くのはあなただけじゃないわ。
 彼は表面的には臆手に見えるかも知れないけれど。
 あなたに触れたその手で、私に触れることもあるのよ。
 .....ほら彼、体力あるでしょう?」


 なにかを想い出したように遠くを見つめながら、ふふふ、と肩を揺らす。


「あなたにそんなユウは理解できるかしら?
 それでも彼を許して、認めて、愛すことができる?」


 ぷつん、と音がした。


「彼を繋ぎ止めるには秘密の呪文が要るの」


 私のなかで、何かが弾けた瞬間だった。


「ユウを縛れるのは、私だけなのよ。

 だからもう、彼に近づかないでちょうだい」



 
 私の世界がぐにゃりと歪んで、崩れ落ちた。


 音もなく。


 声にならない悲鳴を反響させて。 




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