私の掃除が終わるのを、格技場のベンチで待っていてくれるのが、先輩の日課になっていた。

 先輩は私を待つ間、いつも問題集を開いている。意外に真面目なんだ。

 というか、成績は常にトップクラスらしい。

 うちの学園は大学まで一応試験はあるものの、エスカレーターで進める。

 なのに、成績の良い先輩が勉強するんだから、彼は外部の大学を受験するのかも知れない。

 そうしたら…。


 寂しくなって、折角決心した気持ちが揺らぎ始めるのが判った。


 こんなとき、あのボタンがあれば、少しは強くなれたかも知れないのに。


 ふるふると頭を振って考えを払い、私は先輩の待つベンチへと歩いていった。



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