その日、私たちはそのまま学校を抜け出して帰り、家にお泊りに来てくれた瑠璃と夜通し語った。


 一度だけ、上領先輩からケータイに電話がきた。

 はじめての電話。

 でも、出ることは出来なかった。

 きっとまだ、上手く話せないもん。

 明日から、創立記念日と先生方の研修を含めて4連休。

 この間に気持ちを整理して、水曜日になったら先輩に告げよう。



 もう 私は大丈夫、って。


 『責任』なんて重い荷物はどっかに放っちゃってください、って。

 明るく、云おう。


 私、先輩が好き。

 だから先輩を苦しめたくない。これ以上。

 一日も早く、先輩の傷を癒す呪文を知っている人に巡り逢って欲しい。

 彼の心からの微笑みを見たいから。



 だから、さよなら。


 哀しい別れじゃないもん。

 …別れもなにも、最初から始まってもいなかった私達のカンケイ。


 12時の鐘が鳴る。

 夢のような時間はおしまい。


 シンデレラは、幸せな王子様の笑顔が見たいから、ガラスの靴は残さずに去ってゆくのです。


 だから、絶対シアワセになってね。


 先輩には心からの笑顔でいて欲しいから。






 …せんぱい、いつまでもだいすき。


.