「ん…けど。ふたりの間のことは、私たちには判らないよ…」

「聞いてみたら? 先輩に」

「でっ出来ないよ! 私、彼女じゃないんだし」

「そっかあ…」

「それにね。…生理も始まったし、先輩にもう気にしないでって言おうって決めたんだ」


 姫乃は、澄み渡った6月の青空を仰ぎ見た。

 午後一の明るい日差しは、心の曇りさえも熔かして、一歩を踏み出す元気を分けてくれているようだった。



 ―…大丈夫。傍に居られなくても、私のこの想いは変わらないんだもの。


「好きでいるのをやめるわけじゃないから。私、これからちゃんと先輩にアタックするよ!」

「…アタックって死語じゃない?」

「もお〜っ 人が真剣にぃ」

「わかったわかったって…後悔しない…?」

「するかも。でも、いいんだ。瑠璃に話せてすっきりしたし、そのときは慰めてくれるでしょ?」

「おおっ! 任しとけ! カラオケでもいこ」

「うん!」


 にっ と笑いつつ、瑠璃は姫乃の背中をバンバンと叩いて云った。


「私が上領先輩なら、こんな可愛い子を絶対に手離さないんだけどな」


 瑠璃の優しさにまた涙が一筋流れて落ちた。

 私ってやっぱり泣き虫だな。




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