【長】黎明に輝く女王

 いつになく、慌ただしいリュカが言い放った言葉に、その場は一気に静かになった。
 イリヤも自然とヴェイニの方をじっと見てしまった。先ほどの様子とは違って一変、いつになく慌て始める。

「ん、んなぁ! 殿下、貴方、なんてことを!」

 冷静ないつもの姿からは想像つかないほどに、顔を赤くしている。これはもしかして、図星か。

「よのなか、すなおな人の方が得するんだよ、ヴェイニ」

 一方、大人のような事を口にする五歳児。明らかに、リュカの方が落ちついて見える。
 そんな二人を見て、イリヤは笑みを浮かべ、口を開いた。

「そう、あなたなんかにアイツは、“セリナ”は渡しませんよ。そもそも彼女に嫌われている時点で望みなんてないでしょうが」


 自分の気持ちに正直になれると、こんなにも心が晴れやかになるものなのか。
 今まで変な意地を張っていたのがバカバカしく感じてくる。そして、セリナを渡しなくないという執着じみた独占欲が一気に湧き上がってくる。

(あぁ、僕にもこんなココロがあったなんて。でもどこか嬉しいや)

 自覚したら、素直になれる者がどれくらいいるのか、それは分からない。
 ただ、イリヤはその最たる例といえよう。