「庭ね、屋敷を中心に広がっているみたいだけど」

 庭というよりは、もはや森だ。怪しい森の中に佇む洋館だったのか。この森を抜けない事には、手がかりは得られない。
 闇雲に進んでも、迷って出られない。どうすれば。通った道に目印をつけると、一度通ったとかが分かるけど、それだと相手に見つかった時にすぐばれる。
 夜の闇も深く、似たような場所だらけで……。灯りでもあれば、いいけれど。
 そう思い、ふと空を見上げる。空には月や無数の星が輝いている。

「そう言えば、一つだけ輝きが違い、動かない星があるはずよね。それを目印と頼って進めば、方角の検討はつく」

 星なんて普段あんまり見ないし、それで本当に方角が分かるのか。どうすれば分かるのか、いまいち心配なところはあるが、悩んでいる暇なんてない。

「あの大きな星……? かどうかなんてわからないけれど、とりあえず、あれを目印にして、周りの星の配置も憶えて、進むとするか」

 木々の生い茂る夜の森へと突入した。