【長】黎明に輝く女王

 気になる事は多々あったけれど、それでも足は進む。本宮に小さいながらも部屋をもらった身。できることは精一杯したい。

 執務室に入ると、そこはあたし一人っきり。特に何もなければ、一人でしているから珍しい事じゃない。
 現在、書類の整理とかは、父親の秘書が兼務している。そして、自分でできることは自分でする。
 あまり、人付き合いも好きではないから、これで丁度いい。

 とはいえ、初心者のあたしには難しいこともある。
 書類を眺め、どうすればいいのか分かるものと分からないものにまずは分ける。

「んー、港町への視察ねぇ。関税、密輸入などの調査」

 十数年前から盛んになった貿易業。利益も大きいが、それに乗じて不当なことをする輩もいる。
 年に一回、国から人材を派遣して、その調査が行われるのは知っていたが、まさかあたしのところに来るなんて。

「期間はおおよそ1か月。早く終わるかもしれないし、遅いかもしれない」

 そんなことを思いながら、ふと頭に浮かんだのはイリヤのことだった。
 ちょっと前までは一緒に居る事が多かったのに。もしかしたら、1か月近く離れ離れになる。

「ちょっと、ううん、結構かなしいな」

 そう思うと、自分の気持ちを素直に受け止めることができた。かなしい。スキだから、離れると、かなしい。
 なるほど、そうだとすると、納得。


 少しずつ、自覚する自分の気持ちに一喜一憂する。

 さて、どうしたらいいのだろう。視察は今から2ヶ月後。それまでの間に、何か進展あるのかな。