いつまでもこのままじゃいけない。
 何てこと言わなくても、あたし自身よく分かっている。
 でも、その一歩外に出る勇気なんてない。だって変化が怖いから。

 そうやって何時まで経ってもうじうじしている自分が一番キライなんだ。


「今回はいつまでいるの」
「ほとぼりがさめるまで。それまでは自由にさせてもらうよ」

 小さい頃から慣れ親しんだこの神殿は第二の家そのもの。
 昔はよく嫌な事があればここに逃げてきた。

 そして神殿の中庭でひっそりとお祈りをするのだ。

「女神様、こんなあたしを助けて下さい。そして……ごめんなさい」

 小さい頃から聞かされた女神様がこの国を守ってくれているおとぎ話を16の今も信じている。
 他力本願ではないが、祈りにすがってしまう。
 そしてあなたの民がこんなにもダメな人間でごめんなさいと誤る。


 女神様の声は神寵姫と管理者ぐらいしか聴けないとあるが、まれに皇族の中でも聴ける人がいる。
 かく言うあたしもそう、幼い時には何度かお祈りしたときに聴いた。

「大丈夫だよ」

 って。
 だから女神様はあたしの心の唯一明るく前向きな気持ちの表れなんだ。
 言葉で聴けぬとも、庭に差し込む光が彼女のように思え、救われる。