鈍い音がその場に響く!

 あれほど寝たはずなのに、再び睡魔が襲ってきた拍子に窓枠に額をぶつけてしまった。
 その音に対して、中で密談していた奴らも気付き、慌て始めたようだ。

(や、やばい!)

 考えるよりも先に体が動いた。
 建物の角の部分に素早く回り込む。見えない場所だと安心すると、深呼吸した。
 ここが本宮の端、しかも死角になりそうな場所でよかった。

「何……た? だ…かい……だろうか」
「…日は……ま…にし…、また」
「そうしよう」

 小さな声がぼそぼそと聞こえる。相手も小心者だったのか?
 詳しい詮索はしなかったみたいで、こちらとしては一安心だった。

 次第に足跡が遠のいていくのが分かって、難が去ったのを悟った。


「スリルがあっていいかもしれないけれど、こんなんだったら心臓がいくつあっても足りないわ」

 とりあえず、あたしは見つからなかったという喜びと何か怪しい事が動いているという不安を感じながら、部屋の方に戻った。