部屋の中。わざわざ、紅茶まで用意してくれるその優しさ。本当に目がくらむ。

「本当ならこういった話は友達とか、女親にするものでしょうね」
「……ナーディアはあたしの友達じゃないの?」
「あら! 私が友達でもいいの? こんなおばさんが友達じゃセリナの方が恥ずかしくない?」
「ナーディアはぜんぜんおばさんに見えないし。それに、気軽に話せるのはナーディアぐらいだから」

 年から考えれば、しみとか皺とか気にするころなのだろう。
 でも、ナーディアにはそれを感じさせない若々しさがある。神聖な巫女姫だからだろうか、いつも不思議に思っている。

「お母さんに話はしないの?」
「母さんは……リュカの世話で忙しそうだし、公務だってあるし」
「そうやって極力会う事を避けているのね。リュカのことをいうのなら、貴女の幼少期はどうなのよ」

 言われて思い返す。子どもの頃、やはりあたしは女であるということだけで、苦労してきた。
 しかしそれはあたしだけじゃない。あたしを生んでくれた母さんにだって言えていた。
 秘玉の主として、望まれてこの国にやって来て結婚したのに、その役目が果たせないでいたと。

 だから、迷惑かけないようにしてきた。自分の事は自分でできるように、自分の身だって守れるように。
 そういうことでしか、家族と接することができないでいた。