【長】黎明に輝く女王

 思いついたら即行動。裏にある森の小道を歩いていった先にある大きな神殿。
 正しく、神聖な場所。

 こんなにも落ちついてゆっくりと来たことなんてめったにないので、ここぞとばかりに景色も楽しんだ。
 新緑の美しい森、そこから先はまるで別世界。常人には入ることの許されないような場所だと、今更ながら思った。
 温かな風にようやく伸びた長い髪を靡かせながら、歩いていた時だった。

「金のお姫様、そこで何をしているの?」

 鳥の囀りのように、この自然と合った声。天に響くその声に反応して、振り返る。

「ナーディア! 久しぶり。まさかナーディアに先に見つかるなんて、びっくりだわ」
「ふふ、そうね。いつもは知らない間に侵入していたお姫様の方が先にお出ましするからね」
「でも珍しいね。こんな風に一人で外を歩いているなんて」

 厳密にはすでに神殿内であるが、その広い敷地面積。庭すらも、森のような場所である。
 神殿でも上位にいる神寵姫、ナーディアがこうして供も連れずに歩いていることは珍しい。