【長】黎明に輝く女王

 事は思うようには進まない。特に何の進展もないまま、日々過ぎ去って、今までにない“平穏”な非日常を送っている。
 イリヤとの関係も曖昧なものになっている。あたしは後継になったことで、自分のことで精一杯。イリヤはイリヤで何かしているらしいが、よく分からない。
 そもそもイリヤが秘玉の主として成り立っているのか、違うのかも分からない。
 結果的に、すれ違う生活をしているようなものだ。
 今は本当に何もなく平穏だから、常に一緒に行動する必要もない。

「なのに、……どうしてこうもイリヤのことばかり考えるんだろう」

 心配? 同情? それとも、ただ単にあたしが寂しい気持ちをしているだけ?
 思えば思うほど分からなくなってくる。

「あーもう! 考えるの、やめ!」

 そう、やめたい。やめたいのに……やめられないなんて、どうかしている。

 カラッと晴れた空をは大違いの曇っているあたしの心。


「そうだ、気分転換にも久しぶりにナーディアのところに行こうっと」

 今日はラッキーなことに、執務も終わっている。自由時間は持て余すだけで、有意義なものではない。
 なら、知り合いに会うだけでも、その時間は意味のあるものになる。そう考えた。