あたしの心は重かった。どうしてこうも心晴れないのか。答えは分かり切っている。
 ただ、それをうまく説明することはとうてい無理なことのように思えた。


 鍛練場から離れ、向かう先は執務室。一応後継となった身の上、本宮の方にも部屋をもらった。
 それが執務室だ。とはいえ、仮眠室や簡易調理室もありここで暮らすことだってできるくらいの場所。


 執務室には誰もいない。一人で心を落ち着かせたかった。

 中に入ると、整理された印象を受ける。公務があるとはいえ、まだあまりない。あたしが居ない間に整理整とん、掃除などもしてくれているのだろうか。

 机に肘をつき、椅子にもたれかかる。


「あたしに求められていることってなんなのだろう」

 お飾りの後継者? 国の事を考える皇族? それとも……ただ静かにそこにいるだけの姫君?
 どれも違う気がする。

 リクハルドの言っていた言葉。
 “思っていたより姫様は頭脳派だ。深奥の姫君というよりは、女傑といったところか”

「あたしって頭脳派? そもそも頭脳派ってどういうこと?」