【長】黎明に輝く女王

 重苦しい空気だった。緊張が支配する。そんな中、金属がぶつかる音が鳴り響く。
 周りに居た者たちが小さな悲鳴を上げる。

 始まりは唐突だった。気がついたら、勝負は始っている。
 不意打ちかもしれないが、試合開始まで待つことなんてできない!

「おお怖い、突然切りかかるなんて、凶暴だなぁ」
「あんたみたいな野郎を待つほど、あたしは気が長くないのよ」

 喋ることすら億劫。言葉の代わりに、剣を交わす。


 先制はあたしからだった。女だが、幼いころから鍛えてきた。
 下手な男よりか、自信がある。

 だが、この男はあたしの切り込みを悉く受け止める。その表情からは余裕も伺える。
 隙がない。手を抜いたらすぐに攻撃に回られる。

「太刀筋が丸見えだ。型通りというか」
「……んな!」

 焦りの見えない優雅な立ち振る舞いに怒りが支配しそうになる。
 だめ、ここで、感情的になったら、相手の思うつぼだ。
 あたしたちの勝負を見守る騎士たちも、小さな声で何か喋っているが、聞こえない。
 高まった集中力からすれば、邪念。

 このままだと負ける。
 相手を上回る一手を打つことができなければ。
 あたしの息も次第に上がってくる。

「こちらも攻撃させてもらうぜ」