【長】黎明に輝く女王

 石畳の上を歩く音が響く。そして少し歩くと、剣と剣がぶつかる金属音が聞こえる。
 鍛練所は何か所かあり、用途によって使い分ける。ここは、剣や槍などの武器を扱うための場所だ。

 あたしが姿を現すと、一斉に訓練していた者たちがこちらを向く。
 その向ける目線の意味は何なのか分からないが、ここでは身分関係なく、同士として接して欲しいと伝えている。
 あたしに対する賛成派、反対派というのはこの場で分からない。お互いそのようなことを気にせずに訓練しているのだから。

 だから、いつもとの違いはすぐに感じ取ることが出来た。


「おお、姫様が来られるって本当だったんだ。“姫様”のくせに、こんなところに来られるなんて」
「は?」

 一気に周りにどよめく。あたしは声の主の方に体を向けた。
 見慣れない男。あたしと同い年か、それより下? だが、そのふてぶてしい顔の意味はおそらく、挑発。

 ここにいるということは皇族直属騎士団の一員だろう。なのに、あたしに向かってのその態度。
それに金髪をだらしなくのばし、風に靡かせているその出で立ちは、騎士団らしくない。むしろ、芸者か。
 そんななよなよしたヤツがこんなところにいるなんて。

「あ、あ、セリナ様! こちらは、新しく第三騎士団に入隊したリクハルド様です」
「あの、その、リンド公のご子息でして」

 周りにいた者たちが何かを察したのか、そう告げる。