【長】黎明に輝く女王

 息が出来ない……。
 声と言うものがこんなに力を持っているなんて、あたしは知らない。
 甘く、少し低い声はあたしの体全体を支配したかのごとく、何もできないでいた。
 自然に体の中が次第に熱くなっていく。だめ、そんなこと、知られたくない……!

 そう思っていたら、救世主は目の前にいた。

「お姉ちゃんから、はなれろ! このー!」
「うわっ」

 リュカがあたしたちを割るように入り込む。小さい体にどんな力があるのか、分からないけれど、今は助かった。
 離れたことで、ゆっくりと落ち着きを取り戻した。


 だけど、そのあとすぐ沈黙が続いた。
 お互いじっと見つめ合っている。ただ、表情だけが語り、辺りは静か。

 一方、あたしはというと、進んでここに来たわけではないので、何を喋ってもいいのか分からず、この沈黙に拍車をかけていた。


「……とりあえず、すわって!」

 沈黙を破ったのは、リュカの一声と行動。手を引っ張って、近くに合った椅子に導く。
 こういう時、彼のその行動力のすごさを実感する。戸惑いもなく、一直線。幼いが故かもしれないが、それでもあたしからしたら輝いて見えた。

 その隣で、イリヤは椅子には座らず、ひっそりと立つ。

 時に、お茶を飲みながら、会話を楽しむ。いや、あたしはほとんど、相槌を打つ程度で、聞き手にまわっていた。
 なんてことない。普通にする話なんだろうけれど、あたしにはそのこと自体が新鮮なことだった。