ノックすることすら、ためらっていたあたしにイリヤは追い打ちをかける。
でも、傍に居てくれるだけで、どこか心が安心を憶える。
「リュカ、入るよ?」
二回軽くノックをしたら、大きな声で返事が聞こえ、ドアを開けて中に入る。
自然と視線は周りを見渡す。あまり訪れない部屋だから、中がどんな風になっているかなんて知らない。だ
から無意識の内に見ていたのだと思う。
「お姉ちゃん、いらっしゃい! ……ってその人も来てるの?」
若干嫌がっているのが伝わってくる。表情豊かってすごい。
あたしが答えようとしたら、イリヤが手を出しそれを制止する。代わりに、イリヤが答える。
「お姉ちゃんは一人じゃ来れないみたいだったから、一緒に着いて来ただけだよ」
「んなっ! なんで、それを」
人前ではそういうことは決して言わず隠してきたのに、そう言おうと思ったら、昨晩のようにまた口を手で
覆われた。
そして、耳元で小さく囁いた。
――そろそろホントのことを言えるようになったら?


