「繋がりがあるのなら、それを大切にすべきだよ」

 小さくて聞き取りにくかったが、そんな風に聞こえた。

「そう、だよね。弟相手に怖気ついていたらいけないよね、がんばれあたし」

 背中を押されたような気がした。リュカとの関係。別にあたしが弟を怖がっているわけじゃない。
 何しろ慕ってくれる事自体は嬉しい。
 だが、時として無邪気や無垢は酷い刃になる。何よりも怖れているのは、リュカの背後に居る者たちの存在だ。
 つまるところ、自分を護るために、慕ってくれる弟を拒絶しているようなものだ。
 そう思うと、あたしってとんだ酷い人間だ。

「そんなに怖いのなら一緒に行ってあげようか?」
「――ッ!」

 今まで下を向いていたのに、あたしの方に顔を上げて、不敵な笑みを浮かべ、手を差し出される。
 胸がぎゅっとしまった。それを隠そうと唇を強く噛む。
 何気ないことなのに、あたしの胸の鼓動は速くなって止まらなかった。