部屋に籠っておこうとしたら、リュカとのあのことを引き合いに出す。
 ちゃっかり昨日の事をしっかりと憶えて口に言う。
 だけど、あの後の、二人きりの気まずい雰囲気のことについては何も触れなかった。とぼけているのか、黙っているだけなのか。
 あたしとしては、このまま黙っていてくれた方がありがたい。変な緊張をしなくてすむし。

「でも、外に出るの疲れるし」
「じゃあ、こっちに呼んだら?」

 リュカを、あたしの部屋に?
 だめだめ! そんなことしたら……

「迷子になるわ」

 迷子。方向感覚がないのか、誰かと一緒じゃないと辿り着けないのだ、あの子は。
 でもそんなことがいいたいんじゃない。本当は、そんなことをしたらずっと居座ってしまうってこと。
 唯一の安らぎの空間に侵入を許すのは大人げないと思うけど、許可できない。

 結局、口から出たのは自分に対する言い訳だった。

「……どうして、イリヤはそんなにあたしとリュカを引き合わせたいの?」
「家族なんでしょ? 家族ならそういうのは当たり前じゃないの?」
「そうかもしれないけれど、あたしは」

 臆病だからムリ。できない。
 俯いて、何も言わないでいると、イリヤは小さな声で囁くように言った。