あたしは未だに口をふさがれたまま。なのに、イリヤは勝手にリュカと約束をしている。
 そしてリュカが納得したところで、彼は部屋に戻り、あたしはそのままの状態で、自分の部屋まで引っ張られた。
 開放されたのは、部屋の中に入ってからだった。

「っはぁ、な、なんてことしてくれるのよ! 何もここまでする必要ないでしょ?」
「それは、口を塞いだ事? それとも、約束したこと?」
「……両方よ!」

 そもそも、誰かに体を触れられるなんて初めてだった。さっきのその時まで。

「まあ、あの場でああしてないとややこしくなりそうだったから強制排除したまでだよ」
「強制排除って」
「ところで、……キミってそんなに弟と接するのが苦手なの? 傍から見て、挙動不審すぎて笑えるんだけど」

 その言葉にまた言葉が出そうになったけど、言いかけてやめた。
 だって、それは本当の事だもの。言い当てられたからって、八つ当たりみたいなことはしたくない。

「自分から接するのを怖がってどうするの、二人の様子をみたら、弟の方は姉と一緒にいたい。でも姉は弟から離れたくて仕方ない。矛盾した磁石みたい」
「何よ、その矛盾した磁石って」
「磁石はSとNがあって、SとNだったらお互い引き寄せあうけど、同じだったら反発したりする。でもキミたちはそれを同時に引き起こしているみたいだってこと」