【長】黎明に輝く女王

「随分と力のある男みたいだね」
「でも誰も信用なんてできないよ。昼前までと態度が違いすぎでしょ?」
「明らかすぎるぐらいにね。こりゃ、キミじゃなくてもひいてしまう」

 先ほどの事があったためか、むやみやたらに近づいてくる者は減った。
 ただこれまでのように蔑まれたような目で見られるのじゃなくて、媚びへつらう目で見られるのが気に食わない。
 これまで自分たちがしてきたことを恐れ成しているのだろうか。報復が怖いのだろうか。

 熱気の醒め止まぬホールでは、未だに会食が続いている。階下の方に向かおうと移動した時だった。

「おねえちゃん!」

 ドレスの裾をぎゅっと握られ、動けない。振り返ってみると、そこには小さな弟がいた。

「リュカ。そんなに握らなくても、逃げないから」
「うそ! だっておねえちゃん、一緒に住んでいるのに、なかなか会えないし、いそがしいってどこかいくもん」

 小さな瞳にうるうると涙をためて訴えられたら、さすがのあたしもこの先には進められない。
 リュカ、あたしの弟。なのに、とっても心は真っ白純真無垢。柔らかく色素の薄い金髪はまるで天使のよう。あたしと同じはずの碧眼も澄み切った色に見えてしょうがない。
 あたしは真っ黒なのに、この子は真っ白。だから苦手。あたしの苦労も知っていないし。