しばらく、居させてもらうよ、と言ってもナーディアは嫌な顔ひとつしない。
 彼女はこう見えてあたしよりかなり年上だったりする。むしろ母より1,2歳若いだけと聞いている。
 それでも全盛期の美貌を保ったままのこの美女は、誰よりもあたしに尽くしてくれる。
 この神殿の長でありながら、保護者のような人だ。

「でも私は見ていて居たたまれないわ、セリナも16。その年頃なら縁談などもあるのに」
「……あたしには無理。それが赦されることなのかも分からない」
「でも希望は持つべきよ、昔と比べると髪は伸びたみたいだし、金のお姫様のようだから」

 そんなお世辞言わなくてもいいのに。

 昔は男の子のように髪も短かった。言葉遣いなんてその癖が未だ抜けない。
 そんなあたしがお姫様の真似事をしたって本物には成れない。
 なぜそんなふうに育ったのかと言われても、物心ついたときからそうだったからあたし自身もよく分からない。
 詳しい話は人づてに聞いたものだ。


 ことの発端はあたしが生まれた時にまで遡る。