【長】黎明に輝く女王

「このことは既に議会にも通し、決定済み事項である。そして今回初めて公表する」

 つまり、官僚たちはすでに周知のこと、家族も知ってて当たり前のことだが、一般の場でそれを公表したのは今日、この瞬間が初めてということ。
 あたしは驚いた。未だにその事実が信じられないのに、あたしの預かり知らぬところで既に黙認されていたなんて。

「し、しかしながら。皇女様は女性でありますぞ。皇位を継ぐものが、女性なんて前代未聞です」
「皇女は秘玉を持って生まれ、今秘玉の主も導かれた。これこそ女神の意志であろう」

 そう言いながら、あたしの方を指さす。いくら、娘とはいえ、指をさすなんて……。だが、周囲の視線はあたしではなく、その後ろにいるイリヤに注がれていた。
 振り向くと、彼自身も若干驚いている様子が伺える。

 騒がしい会場の中、それを鎮める鶴の一声。

「それに、皇女セリナ様は幼き頃より女神のご加護を受けられた方。私も認めていますゆえ」
「し、神寵姫様……!! あの方がそう言われるのなら、女神の意志というのも」
「だ、だがこんなこと今まで」
「静かに。私は女神の声を預かる者。私の声は女神の声であることをお忘れなきよう」

 ナーディア。いつの間にここに? 確かに会場内をじっくり見まわしてなど居なかった。最初から居たのかもしれない。
 けれど、皇王ですら収拾できずにいたこの状況を一瞬で収めるのだから、彼女は正に神と連なる者なんだ。


「神寵姫もそう言っている。これは決定事項である。皆、これからは皇女を皇太子として扱うように」

 その一声で、あたしのこれまでの生活が終わっていくのを、なぜかあたしは他人事のように感じていた。