「あら、姫様。今日はやけに静かです事」
「今日は大切な儀式ですから、当たり前でしょう?」
「……まあセリナ様が見違えるようになっているわ」
すれ違う者たちが口々に冷やかしを言う。別に気にしてなんていない。見下したような目で見ようが、好奇心の目で見ようが。
式典のある宮まで歩く距離は短くはない。心に鎧を着て、強がりの顔を被れば怖いものなんてないんだから。
そして後ろを歩く監視役、イリヤ。彼は特に何も言ってこない。あくまで、奴は一歩下がったところに居続ける。
その立ち振る舞いが妙に大人びているのか、あたしには冷やかしを言うくせに、イリヤには紳士みたいと歓喜の悲鳴を上げている。
前で立っているあたしは表情は分からない。ただ、声だけが手掛かり。でも、あたしは悪くてイリヤはいいみたいに言われているんだろうって心の中で思っている。
早く目的地に着きたくて、自然と早歩きになっていく。大丈夫、大丈夫と必死に言い聞かせて。
朝日が昇り、既に数時間。まだ昼時ではないが、いよいよ皇王の在位十周年を記念する式典が始まった。
久しぶりに家族と会ったが話す間もなく、所定の位置に座る。国務筆頭が司会となり、宰相が先に挨拶をする。
「……であるからして、我が国は女神の恩恵を受け、この十年でさらなる飛躍発展をし……」
(な、長い。長すぎるじゃないか)
「今日は大切な儀式ですから、当たり前でしょう?」
「……まあセリナ様が見違えるようになっているわ」
すれ違う者たちが口々に冷やかしを言う。別に気にしてなんていない。見下したような目で見ようが、好奇心の目で見ようが。
式典のある宮まで歩く距離は短くはない。心に鎧を着て、強がりの顔を被れば怖いものなんてないんだから。
そして後ろを歩く監視役、イリヤ。彼は特に何も言ってこない。あくまで、奴は一歩下がったところに居続ける。
その立ち振る舞いが妙に大人びているのか、あたしには冷やかしを言うくせに、イリヤには紳士みたいと歓喜の悲鳴を上げている。
前で立っているあたしは表情は分からない。ただ、声だけが手掛かり。でも、あたしは悪くてイリヤはいいみたいに言われているんだろうって心の中で思っている。
早く目的地に着きたくて、自然と早歩きになっていく。大丈夫、大丈夫と必死に言い聞かせて。
朝日が昇り、既に数時間。まだ昼時ではないが、いよいよ皇王の在位十周年を記念する式典が始まった。
久しぶりに家族と会ったが話す間もなく、所定の位置に座る。国務筆頭が司会となり、宰相が先に挨拶をする。
「……であるからして、我が国は女神の恩恵を受け、この十年でさらなる飛躍発展をし……」
(な、長い。長すぎるじゃないか)


