【長】黎明に輝く女王

 式典当日。その日は朝から忙しかった。街の方でも今日は休日となり、彼らにとっては厳かな式というよりかは、お祭りのような感じらしく、屋台のように特別店が並んでいる。
 当人たちは緊張感が漂っているのに、他人事のようである。確かに、他人事ではあるが。

 あたしはというと、朝食後、予定を確認しているところ。まだ着替えも何の準備もしていない状態。
 何しろ、隣には男、イリヤが立っているから、出来るわけがない!

「で、どうしてここにいるの?」
「いちゃいけないの、僕の部屋もあるのに」

 男にしては驚くほどのきらきらと輝く瞳を向け、彼は笑いかける。その笑みが、不気味で怖い。
 この二か月と少し、イリヤとともにすごし分かった事。

 まずは彼がとても嫌味なこと。これは最初っから気付いていた。でも最近になって分かった事は、あたしじゃなければ、普通にとても礼儀正しいということ。どういうことよ。

 次に、見た目よりもずっと大人びていること。青年なのか、少年なのかよく分からない。年はあたしと同じ16だし、童顔に見える。
 近くに黒髪の人なんていなかったから、そこら辺はよく分からないけれど。
 それでもなんだかんだで、この国の事を勉強している。もともと頭がいいのか、あっと言う間に吸収してしまう。羨ましいなんて、口には出さないけれど。
 もともと博識なのだろうというのも時々伝わってきた。さっぱり分からない言葉や意味をいろいろ呟いている。
 何よりも、今回の式典のことで、彼自身がいろいろ調べているのは分かった。何を調べているのかはよく分からないけれど。