【長】黎明に輝く女王

 いつもと何か違う事に気付いたのは、その次の日の朝だった。朝起きると、イリヤは既に姿を消していた。
 別にあたしが気にすることじゃないけれど。そしていつものように、一人で朝ごはんを食べる。

「ドレスの採寸? 突然、なぜ」
「2か月後の式典に合わせて新調すべきと言われまして」
「あたし、ドレスなんてそもそも好きじゃないし、数も少ないし」

 その考え自体の意味は理解できる。でも個人的な意見から言えば、そんな必要はない。
 でもあたしに拒否権なんてないから、頷くしかできない。

「それでいつあるの」
「午後の予定です。ですので、午後にはお部屋に御戻りくださいませ」

 逃げると思っているのか。さすがにそこまで反抗な態度を取る意味もない。
 そんな話を聞きながら、それまで余った時間をどうしようかと考える。
 しかしながら、考えていたらそれだけ時間が過ぎてしまい、結局何も出来なかった。


 ドレスの話をしている時は、やっぱりあたしも女なんだと思ってしまう。いろんな生地に溢れる部屋の中。
 赤やピンク、明るい色から、青や白といった暗い色まで、様々。
 ただ、式典なのだからとメインは明るい生地にしようと話している仕立て屋の娘たち。

 あたしは特に口を挟むわけでもなく、ただ、受け身になっていた。