【長】黎明に輝く女王

「ご飯食べたい」
「食べたら?」
「あんたは食べていないの?」
「別に食べなくてもいいし」

 刹那、あたしに雷が落ちた。いや、落ちてはいない。ただ、それほどの衝撃だった。
 ご飯を食べなくてもいい? いくらどんな奴でも、さすがに生きている限り食べなければ死んでしまう。
 あたしだってこんな扱いだけど、一日三食しっかりちゃっかり食べている。いや、食べなければ多分機嫌が悪くなる。

 この小さな中央で、あたしが一人でも生きていけるように常に用意している食材を簡単に調理しながら、衝撃の話をしていた。

「もしかして、今まで満足に食べれなかったとか?」
「何日か食べなくても生きることはできるよ。それに食べなくても栄養を取ることはできる」
「そんな方法があるの? でもそれは食べた気がしなさそうだなあ」

 意外にも食い意地のあるあたしにはそのような世界じゃ生きられそうにない。
 あたしがいろいろ聞き出したせいか、イリヤは少し思い出したかのように過去のことを話した。

「生きる上で一番重要なのは食だというのはその通りだけど、それすらも管理されているような場所だったよ」
「ずいぶんと居心地の悪い世界なのね」
「政府にすべて管理されていた。狗のように働き成果を出せば、それなりの生活は保障される。だけど、一度反乱分子を見なされたら徹底的に排除させられる。だから、必死に生きた。生きる為にどんな卑怯なことだってした。天と地ほどの差、いいや、それこそ天国から地獄の生活だよ」

 話を聞くに、まるで独裁者がいるかのようなその国。頂点に立つ者の存在意義が違うんだなと思われた。
 あたしの思う王とは、国をまとめるものであり、そんな独りよがりのような存在ではない。

「一つ、聞いてもいい? イリヤはその、このシロラーナに来てよかったと思っている」
「……あの場所から逃げられるのなら、それは願ってもないことだよ」

 純粋に幸せそうとは言えないが、笑顔を浮かべて彼はそう言った。