必死に祈りにも似た思いを呟きかける。そんな状態だったため、気付かなかった。

「追い詰められたら、神頼みってわけか、くだらない」

 少し離れた扉から声が聞こえる。イリヤが扉にもたれかかるように立っている。こんなにも、他人の存在が嫌だと思ったことはない。

「何なの、笑いたければ笑えばいいじゃない」
「泣きそうになっていたから、様子を見に来ただけなんだけど。居もしない神などという幻想を抱く姿が滑稽すぎて」
「神を愚弄するというの!?」
「そういうつもりじゃなくて、ただそんな非科学的というか、非現実的な幻想を夢見てもと言っているんだよ。別に否定なしていない」

 あくまで冷静に語るその男の姿が、あたしの精神を余計に逆撫でる。
 それだけじゃない。その時のあたしはおかしかった。突然突きつけられた事に加え、心の拠り所でもあった女神さまのことも侮辱されたと感じたから。

「……ふ、そうか知らないのか。なら教えてあげるよ。この国は女神さまの恩恵の元成り立っている国。そしてあたし自身、その女神さまの声を何度か聞いてきた。こんな身の上じゃなければ、神殿勤めしたかったくらいよ。つまり女神さまを愚弄するのなら、この国では生きていけないわね」
「そうなんだ。でも信じれないものを、信じろと言われても困るんだけど」

 結局、意味をなさないことだけが分かった。これ以上、イリヤと話しても結論なんてでない。あたしは、奥の寝室へと姿を消した。