「にしても、なんで今頃現れるんだろう。そんなこと言いだしたら、疑問だらけだけど」
「秘玉の主が召喚される時期は私たちにはよく分からないから。まさに神の御心のまま。だからこそすべては女神の意志なのかもしれないけれどね」
女神の意志、か。
この部屋からは緑の庭園が見える。この神殿に住まう者にとって、特に神聖と言われるその庭園。
神寵姫はその場所から、女神の言葉を預かる。あたしも二回ほど見たことがあるが、とても神秘的な光景だったことを覚えている。
直接言葉を聞くことのできる神寵姫――ナーディア。彼女の言った事はなぜか女神の言葉のように思えた。
「女神の言葉を聞くことができる貴女だからこそ聞きたいことがある。今、あたしが動くことは良しとでるかしら」
そろそろ行動にうつすべきか。見えない敵に向かって。応えを待つ間、緊張感が走る。
あたしの言葉を聞いて、ナーディアは目を細める。そして何か考え込んだ後、話しかけた。
「そうね、時かもしれない。秘玉の主が現れた今こそ」
その言葉に強くうなずく。あたしのすることはもしかしたらこの国そのものを敵に回すのかもしれない。
それでも、生き抜くために動かなければならない。


