それからは毎日が慌ただしく、充実した日々を過ごした。
イリヤと初めて会ってから、もうすぐで一年になる。あたしも年を一つ重ね、17歳になる。
そんな記念の月に、後継式が行われることになった。
緊張はある、不安もある。でも、今のあたしにはそれ以上に喜びがある。
そんな喜びを噛みしめながら、部屋の中で準備をしているのだが、今回はこの部屋に母とナーディアが来ている。
着替えをしたり、髪を結ったりしながら、親子の話を珍しくしていた。
ナーディアには母とも姉ともいえる存在ゆえ、そばに居てほしいとあたしから頼み込んだ結果だった。
「セリナの、こうした輝かしい日が来るのを、間近で見る事が出来るなんて」
「……女神様もとても喜んでおられるわ」
正装を身にまとい、鏡越しで二人と話す。その顔はたんなる喜びだけでなく、これまでの辛かった想いや苦労を感じさせるものだった。
「あたしは、今日この日を一番に女神様に報告したいな」
「あら、それはどうして?」
後ろに立った母があたしの金の髪を撫でながら、聞いてくる。
「だって……あたしはもしかすると女神様に一番迷惑をかけたのかもしれない。小さい頃から何かあれば、『どうして、あたしだけこんな目にあうの。女神様、こんなあたしを助けて下さい』っていつもお願いしてた」
願ったところで、結局自分で行動して変えなくちゃいけないということは、今のあたしが一番身をもって知っている。
「でも女神様はそんなに迷惑なんて思ってないかもしれないわ」
ナーディアのその言葉に母も頷く。
「そうね、女神様にはこの未来がすでに見えていたかもしれないし」
「え、そういう力もあるの!? 女神様って」
「さああたしたちは彼女自身じゃないから分からない。けれど、あなたは『この国を大きく変え、歴史に名を残す』らしいわよ」
口元に弧を描き、にやりと笑む母の姿にあたしは疑問しか感じなかった。
感じなかった……けれど、そのことについて深くつっこんで聞くのはあまりよくない、と読み取った。
「いやでもそんなこと言われたら、逆にプレッシャーが」
「セリナに限ってそんな言葉が出るなんて! 以前ならプレッシャーすら感じないかと思ってたから」
「む、それはいくらなんでも、酷すぎる!」
化粧を施してくれたメイドたちも、笑いをこらえきれず、口元に手を添える。
そんな状況すらも、楽しいと思えるようになったことに、やっぱり女神様には感謝しかない。
イリヤと初めて会ってから、もうすぐで一年になる。あたしも年を一つ重ね、17歳になる。
そんな記念の月に、後継式が行われることになった。
緊張はある、不安もある。でも、今のあたしにはそれ以上に喜びがある。
そんな喜びを噛みしめながら、部屋の中で準備をしているのだが、今回はこの部屋に母とナーディアが来ている。
着替えをしたり、髪を結ったりしながら、親子の話を珍しくしていた。
ナーディアには母とも姉ともいえる存在ゆえ、そばに居てほしいとあたしから頼み込んだ結果だった。
「セリナの、こうした輝かしい日が来るのを、間近で見る事が出来るなんて」
「……女神様もとても喜んでおられるわ」
正装を身にまとい、鏡越しで二人と話す。その顔はたんなる喜びだけでなく、これまでの辛かった想いや苦労を感じさせるものだった。
「あたしは、今日この日を一番に女神様に報告したいな」
「あら、それはどうして?」
後ろに立った母があたしの金の髪を撫でながら、聞いてくる。
「だって……あたしはもしかすると女神様に一番迷惑をかけたのかもしれない。小さい頃から何かあれば、『どうして、あたしだけこんな目にあうの。女神様、こんなあたしを助けて下さい』っていつもお願いしてた」
願ったところで、結局自分で行動して変えなくちゃいけないということは、今のあたしが一番身をもって知っている。
「でも女神様はそんなに迷惑なんて思ってないかもしれないわ」
ナーディアのその言葉に母も頷く。
「そうね、女神様にはこの未来がすでに見えていたかもしれないし」
「え、そういう力もあるの!? 女神様って」
「さああたしたちは彼女自身じゃないから分からない。けれど、あなたは『この国を大きく変え、歴史に名を残す』らしいわよ」
口元に弧を描き、にやりと笑む母の姿にあたしは疑問しか感じなかった。
感じなかった……けれど、そのことについて深くつっこんで聞くのはあまりよくない、と読み取った。
「いやでもそんなこと言われたら、逆にプレッシャーが」
「セリナに限ってそんな言葉が出るなんて! 以前ならプレッシャーすら感じないかと思ってたから」
「む、それはいくらなんでも、酷すぎる!」
化粧を施してくれたメイドたちも、笑いをこらえきれず、口元に手を添える。
そんな状況すらも、楽しいと思えるようになったことに、やっぱり女神様には感謝しかない。


