こうして、あたしの日常は少しずつ変化していく。
 だが、自分の部屋の一部を貸し出しただけで、相手とはあまり関わろうとはしなかった。
 あたしはというと、相変わらず皇宮で生活する時間は少なかったからである。

 ナーディアのいる神殿の方にもっぱら足を運んでいる。

 世間の喧騒が嘘のように、静かなこの場所は、やはり聖域と呼ばれるだけのことはある。
 そんな神聖な場所を避難場所のように扱っていいのか、いやよくないだろうけれど、仕方ないことだと思う。

「それで、ほったらかしにしているというの?」
「人聞きの悪い。互いに好きなように生活しているだけ」

 心穏やかに話せる数少ない相手。だからこそ、ありのままを心おきなく伝えることができる。
 そして、こんな風に返ってくることも予想できた。分かっているからこそ、あたしもそれ以上は言わない。