「騎士団の予算の方は、こちらでいいですか?」

 我が執務室では、今日も穏やかに、そしてあっという間に時が流れる。
 優秀な秘書があたしの希望通りにまとめてくれた書類を差し出し、確認を取るのだが、いつ見ても完璧だ。

「えぇこんなもんでしょう。あぁでもいいなぁ、最近はあたしも体動かしてないから鈍っているだろうし」
「それなら、午後の執務を早めに切り上げて、たまには運動なさいますか、騎士たちの視察も兼ねて」
「やった、ラッキー!」

 いろんな方面のことを処理する以上、どの分野に関しても興味をもち、対処対応しなくてはならない。
 そんな中の楽しみが鍛練だったりする。

 まさか、自分の身を護るので始めたことが、こんなことになるなんて以前のあたしなら想像もしていなかっただろう。

 その日は、やるべきことをいつも以上のスピードで終わらせて、早々に鍛練場に向かった。



「お、姫様じゃないか」
「こんなところに来て、お仕事サボって、ストレス発散ですかえ?」

 好き放題言われているが、今のあたしにはこれがとても居心地がいい。

「なぁに言ってんのよ。あなたたちがちゃんと、励んでいるか見に来たの。ストレス発散はそのついで」
「いやいやそちらが大の目的でしょに」

 冗談交じりで、笑いながらそう語る。そんな風に話せる人がいるのも楽しい。

 まぁこの場でもし欲が言えるのなら、あたしはイリヤとやってみたかった。けれど彼は、周知の通り、そっちには全く興味のないインドアなヤツ。だからそれが実現することはないだろうけど。