「さぁ。今のキミをみたらどうでもよくなったけど、他のヤツと楽しそうに会話するのはいただけないな」
「な、何よ」

 自分だって他の人と楽しそうに会談していたくせにと、ほんの少し笑いながら顔を離す。

「あーあ、今日、キミは僕のモノなんだからと宣言するんだった、できることなら」

 イリヤはそう言いながら、あたしの顔を覗き込む。急に見られ、恥ずかしくなり逸らそうとするも、両手で挟まれ、動かす事が出来なかった。


「ちょっと、離してよ。逃げないから」
「でも、キミはすぐどこかに行こうとするじゃない。こうしてしっかり捕獲しておかないと。余所見しないように」

 唇が重なる。反射的に目をつむると、今度は角度を変えてまた迫ってくる。

「や、ちょ……と」

 次第に深く深く絡みあってく。水音まで立ってしまい、恥ずかしさのあまりに逃げようとするのに、強い腕の中でもがくことしかできない。
 だんだんと痺れてくる。

 そんな状態が伝わったのか、ゆっくりと離れていく。淫らにも糸をひきながら。


「次はないから。自分でよーく考えて動くんだよ」

 耳元でそう呟くのを、あたしは静かに聞いていた。
 今度からはなるべく一緒に行動するようにしたほうがいいななんて、頭の中で考えながら。