そして、無事に終わり部屋に戻ったのだが、どうやら無事とはまだ言い切れないみたい。

「で、何がいいたいの。最初の方、自分だけ楽しんでいたのはイリヤの方でしょう、あたしは何もしてないわよ」


 先手必勝とばかりに、矢継ぎ早に喋る。あたしは別に何とも思ってない。ちょっと焦っている……なんてこともないんだから。

「……一緒に行くなんて確かな約束をしていたわけじゃないし、お互い自由に行動していたのは仕方ないでしょ」

 俯いて、そう言う。
 イリヤの顔を見て堂々と言えなかった。

 今、あたしは耳に入る言葉の全てに怯えているのかもしれない。


「はぁ、そんな風に拗ねることないだろう。何にも言えなくなるじゃん」

 そう言いながら、包まれるように抱きしめられる。お互い、顔は逸らしていたけれど、そこから伝わる温かさで何か感じる事が出来る。

 イリヤはいつでもやさしいんだから――。

「何を言うつもりだったのよ」

 今の顔を見られたくなくて、イリヤの胸元に顔を押し付けながら話す。そんな間でも、変わらずぎゅっと抱きしめてくれるその優しさがあたしには切ない。