それからも、夜会は続いていく。主催者あいさつは終わったのだから、あとは会談をしたり、ダンスを踊ったりなど勝手気ままに過ごす人々。

 それはあたし自身もそうである。本来ならばもっともっとアピールのために、会談に参加したりすればいいのだろうけど、もうそこまでの力が残っていなかった。

 周囲の様子を見ても、和やかにいい雰囲気であるから今日のところはこれで許してもらおうと思いながら、ゆっくりと過ごす。


 イリヤの方も、あいさつ後はあたしの近くで食事をしていて、会談の方は参加していなかった。



「おねえちゃん、すごかったよー」

 一息付いたところにやってきなのはリュカだった。
 いつもと変わらず、笑顔を振りまく姿は流石とでも言うべきか。

 リュカを見ると、つい付き人のようにぴっとりついて離れない例の人物が頭によぎる。


「あれ、小うるさい家庭教師はいないの?」
「もうなんでぼくじゃなくてヴェイニのことなの~!」

 頬を膨らませて、怒っていることをアピールしていても、それがまた愛らしい姿なのだろう。
 リュカはそのままぶつぶつと語り始めた。

「……いいかげん、ヴェイニもしつこいから今日は来るなって言ってきたんだ」

 仕事では参加しなくても、個人として参加するかもしれないから、それも断った事を付け加えて。

「リュカ、あなたの将来があたしは心配だわ」

 怒りながらも嬉々として話す姿に、あたしは本気でそう思った。

 リュカを支持していたあの男からすれば、確かにこの場に参加したくない気持ちがあってもおかしくない。
 と、自分の中に正当化する理由もいろいろ考える。

「いいんだよ、どうせヴェイニは“むくわれない男”なんだから」
「……どういう意味なのそれは。それに報われないって、よく知っているわね」

 大方、その家庭教師にでも習ったのだろうが、こういう風に使われているとは当の本人も気づいていないだろう。


 結局夜会では、リュカを中心に、いやリュカにふりまわされ、家族ばっかと話こんでしまい、イリヤはというと蚊帳の外状態になってしまっていた。