周りの好奇のような目は気にしなくてもいい。分かってくれる人がいるだけでも幸せな事だと、そう思っていたかつての自分。
 そうよ、大丈夫。何も怖いことなんてない。

 怖いのなら皇女の仮面でも被ればいいのだから。そのために、今日は早くから着飾っていたのだから。



 あたしは会場全体を見回した後、ゆっくりと息を吸う。そして、それとともに気合いも入れ込み、言葉を発した。


「皆さま、本日はお集まり頂きありがとうございます」

 普段の自分から信じられないような高い声で喋る。あたしが言葉を発しても、他の事をせずに話を聞いてくれている。
 それだけでもとても嬉しかった。


 話をしていても、料理を食べてたり会談していたりする人たちだっている。
 そういう人たちはたいてい協力的ではない。どうでもいいと思っているからこそ、それを態度でわざと示すのだ。


 けれど今はそんなことをしている人は誰もいなかった。

 怪訝そうな、もしくは厚かましそうな顔をしている人もいるにはいるが、それでも手や口を休め、こちらを向いてくれている。
 今はそれだけでも十分だ。