【長】黎明に輝く女王

 鏡に映る自分の姿を確認する様は、まさしくあたしは女であることを語っているようだ。
 数年前のあたしからすれば信じられないほど、女らしくこのドレスを着こなしていると思う。やはり仕立て屋の腕がいいのか、素材はこんなんでも、どうにでも変化する。


 ここまでなれば、周囲はともかくイリヤがあたしを見る目が少しでもいい方向に変われば……なんて思う。
 
「って、何考えているのよ!」


 鏡の中の思わずにやけた自分の顔を隠す。恥ずかしくなる自分をどうしかし、平然を装う。
 大丈夫、この表情ならばれやしないなんて独り言も言いながら。


「姫様、失礼します」

 部屋の中、一人で百面相していると、そこに第三者の声が聞こえた。
 びっくりして思わず、引き攣った笑みを浮かべ応えてしまった。

「イリヤ様からですが、用事ができたので先に会場の方に行くそうです」
「え、そうなの」

 パートナー同士は基本そろって参加する。もちろん、入場だってそうだ。
 あたしだって、二人そろって行く事をどこか心待ちにしていた。それなのに……。

 メイドの言う言葉をどこか呆然と聞き、まるで他人事のように受け取っていたが、その意味が次第に分かってくると、悲しみというか怒りというか、そんな気持ちが込み上げてくる。


「何なのよ、用事って……いいわよ、別に、あたしだって用事ができたから一人で行くわ」

 近くにいるメイドに語りかけるようにそう宣言をするあたしに、彼女も「は、はい」と慌てて返事をする。

「で、では出発の準備を」

 慌てるように、見送りの準備をするメイドたち。そんな彼女たちの姿を見て、あたしのやる気も少しずつ上がっていった。