「我が国の秘宝みたいなもの? もともと皇太子になる子が持って生まれ、時がきたら管理者……さっき一緒だったフロウがそれをもって妃になる乙女を導くのよ」
「でも僕は男だけど」
「見たら分かる。もう少し笑ったら可愛い顔していると思うけど」

 後半は小さな声で呟いた。確かにあたしよりすこし背が高くて、全身真っ黒な男って感じだけど、丸っこい顔をしているのだから、笑えば可愛らしくなると思うのだが。
 幸い、聞こえていないよう。安心、安心。

 話は長くなりそうなので、一応座ってお茶を飲みながら続きを話す。
 花茶はリラックス効果があるのか、先ほどと比べてだいぶ落ち着きを取り戻した。

「だから問題なのよ。我が国では普通皇太子と言えば、男児。不思議なことにこの700年近くずっとね。だけど、今回生まれたのは女児。はたしてどうするってこと」
「ああ、何となく分かってきた。本来ならば男児を皇太子にしたいところだけど、女児しかいないからこうなったってわけ?」
「それは少し違う、かな。男児はね、いるにはいるんだよ」

 あたしの家族。今はあんまり接することもないけれど、父に母。そして弟がいる。弟とは年が離れていて、今5歳。実に11歳差なのだけれども……父母は小さな弟に構いっきりになるので、あたしとはホントに接する機会がない。
 それにあたしは弟が好きじゃない。むしろ、嫌いに近い。