【長】黎明に輝く女王

「セリナが皇太子となる、それはもう変わらない、変えられない事実。皇太子となり、何れは女皇王となる」

「で、でも。実際、手足となって働く周囲の同意が得られなければ、皇王とはいえそれはお飾りになるし、厄介者でしかないけど」

「それは皇王がとんでもない役立たずの場合だろう? セリナは役立たずなんかじゃない。今だって一生懸命、いろんなことを考えている。働いている。その姿を見れば、人は自ずと集まって来る。それはつまり人望ある王ということだ」

 強く語られ、それはその通りだと思うし、頭の中では分かっている。
 けれど、あたしがそんな素晴らしい人間になれるのかと思うとそれはとても不安だった。

「官吏だって、貴族だって、みんな人なんだ。人には心がある。理由もなく人を嫌うなんてことはない。そんな輩がいるなら、それは人間の屑ってことだ」

「く、くずって言いすぎじゃないの……?」

「ははは、それくらい強い気持ちで毎日過ごせばいいんだ。それにセリナの不安も分かる。自分が何れ国の頂点に立つということはとてつもない大きなプレッシャーがかかる。だが、それは普通のことなんだ」


 父は出されたお茶を一杯飲み、思い返すように目をつむりながら語った。

「俺だって、とても不安だった。ちょうどセリナと同じ年の頃だったか――。俺の場合は元々一人っ子だから、何れ皇位を継承するのは、幼子のころから分かっていたし、そのために勉学にも励んだ。でもいざ、立太子の儀をするとなると体中が冷え切って、身震いしてね……」

「え、どうして? 父さんの場合、生まれた時からすでに皇太子そのものだったのに?」

「自分のことは自分がよく知っているから。しんどいことや堅苦しいことは嫌いだし、何をやっても満足にできることなんてほとんどなく……親とも親子のように接した事なんてなかったから、誰にも頼ることができずにいた分、一人で全部抱え込んでしまってそれが爆発しそうになったんだ」