そして、離宮の方に戻ろうと足を進めていた時、声を掛けられた。
「あれ、エッカルト公。……今日は休みだよね?」
話しかけてきたのは、秘書であるエッカルト公。もしかして、急遽、予定が入ったとか? 嫌ではないけど、せっかくの休みなのに、という気持ちでそれ以上の言葉がでない。
そんなあたしのことも承知済みなのか、特に慌てる様子もなく、いつもの落ち着いた口調で答えた。
「執務のことではありませんよ。ただ先ほど、陛下の方からお話があるので陛下の執務室へ来るようにと伝言を預かっているだけです」
「へぇ、あんまりいいような気がしないけど……分かった、行ってみる」
「ええ、伝えはしましたので、私はこれで」
具体的にどういう事なのか、尋ねてみても笑顔で笑うだけで、何も答えない。
別に、彼がそういう風にしていることは変なことではないが、嫌な予感しかしない。あたしの直感がそう言っている。
本当に用件だけ伝えると、元来た方へ戻って行くエッカルト公。
あたしにこれを伝えるためだけに、わざわざ来たのかとも思うが、これ以上考えても埒が明かないので、言われた通り、父親である皇王陛下の元に向かう事にした。
「って、逆戻りじゃない。こんなことならもっと早く伝えてほしかった」
離宮を目の前にして、目的地変更。そう思うのは仕方のないことだと思う。


