「じゃあ、こっちから話させてもらおうか。結論から言わせてもらうと、すでに元のあの世界じゃ生きていけない。理由は政府の敵になったからと言えば分かるかな。とあるプロジェクトの極秘情報を知ってしまって以来、そこからは逃げ出そうと思っていた。お尋ね者になる前にね。まあ、そんな時にこっちに来たわけ」
「随分と端折った説明ね」

 多分、奴の頭の中がそうなっているんだろう。確かに分かりやすいっていえば、分かりやすいけど、分からないことだらけでもある。
 まず元の世界ってどこってこと。それになんで政府の敵になったのか、あとその極秘情報って何。
 だけどあたしが知ったところで、まったく関係ない話だからどうでもいいけど。

「それじゃあ、あたしの方も簡単に言わせてもらうよ。まずあたしは皇女という地位には居るものの、はっきりいって命を狙われている厄介者。誰に狙われているのかはまだよく分からないけど。つぎにそのあんたの持っている秘玉」
「これ?」
「そう、それよそれ。まあ、あたしも実際見たのは初めてのようなものだけど」

 そう言って、イリヤの持つ秘玉を見る。まだ小さな玉である。いや、それ以前に……色がない?
 よくよく見て初めて気付く。可笑しいと思い、彼の手のひらにあったそれを取り、光にかざしてみる。

「色がないってこともあるの? あたしの知っている秘玉とはちょっと違う?」
「勝手に取らないで、それ今は一応僕のモノなんだから」
「あーはいはいそうですか。別にあたしはいらないから。ってそうじゃなくて、その秘玉よ」
「何かあるの、それ」

 再び、秘玉は彼のてのひらの中に戻る。以外にも気に入っているのか?
 てのひらでころころと転がして遊ぶ姿は、その大きな姿とは裏腹に子どもっぽく思える。もしかしたら、精神年齢は子どもなのかもしれない。