扉の向こうは見たこともない世界だった、としか言いようがなかった。
白い服に身を包んだ男たちが、椅子に座って何かをしてたり、立って何かを探したりしている。
何をしているのか、と考えた時、あたしにはそれにあう表現が何一つ思い浮かばなかった。それくらい、何をしているのかよく分からない光景だった。
外にまでそのよく分からない雰囲気がもれている。中はより異様だとしかいうことができず、かたまっていると、あたしに気付いたのかこちらに向かって喋りかけてくる男がいた。
「姫様……、所長~! 姫様が来てますよ~」
あたしはこれまでの経験上、皇宮にいて白い目で見られることには慣れていた。だが、嬉々として黄色い声で話される経験はなく、ますますどういう反応をしていいのか分からず、戸惑った。
そのうちに、やはり白い服を着たイリヤがやって来て、目を丸くして言った。
「あれ、どうしてこんなところにいるの」
その言葉に返事が出来るまでどれほどの時間を有したのか。
とりあえず、正気に戻ったあたしは矢継ぎ早にイリヤに質問をした。
ここは何なのか、今何をしているのか、なんでこんなにも変な雰囲気なのか、どうしてみんな同じような服を着ているのか……キリがないほどの質問に、イリヤは眉を寄せて、そんなに一気に言われても答えられないと怒った口調で喋った。


