【長】黎明に輝く女王


 皇宮の中、本宮の外れの場所に居を構えたイリヤの仕事場所。その場所は、離宮とも離れているため、滅多なことでは近付かないエリアだ。

 身近な場所にありながら、どこか遠い場所。分からないことはないが、似たような造りの部屋がたくさんあるため、どの部屋なのか若干間違う。


 歩きながら、そんな事を考えていたのだが、その考えは見事裏切られる。
 というのも、明らかに他とは違うという雰囲気を醸し出している部屋がある。あまりにも、おかしい。というか、近付きたくないと一瞬思ってしまうほど。


「な、何をしているの?」

 怪しい、怖いといった気持ちのなか、その謎を解き明かしたいという好奇心とが心の中で葛藤し合う。

 今更何を怖気づいてるの、と好奇心の塊が呟く。
 いやいや、見てはいけない恐ろしいことをしているのがこの場に居て分かるのなら引くべき、と呟く声も。

 一歩を踏み出そうにも、その勇気が今は欲しい。
 周りにしてみれば一瞬だったかも知れない時間で、あたしはたくさんのことを頭の中で話した。自分たちで会議した。


 結果、この足を前に進めることに決まった。

 気合いを入れ、ゆっくりと足をドアの近くにまで進める。そしてドアの前で大きく深呼吸をした。

「よし!」

 軽くノックをした後、失礼しますと小声で言い、その大きな扉を開いた。