その日の会談はその後も特に問題もなく、順調に進み、暗くなる前には終わった。ここでいったん部屋に戻り、一息つくとしたいが、この後に晩餐会が予定されており、緊張が抜けない。

 嫌ではない。けど好んで行きたいとも感じない。ただ、それに赴くにはあたしの心の中で何かしらのやる気を注入しなければ、やっていけない、そんな感じがした。



「はぁ~疲れる」
「まあ、そういうのに慣れていないからね。でも上々じゃない?」
「そう? ……そう言ってもらえると、何かこれからもがんばれる気がする」


 椅子に座り込み、立ちあがることもできずにため息をつくあたしの背中をイリヤがそっと撫でる。
 そしてたまらず、彼の身体に抱きついた。


「あれ、珍しいじゃない、自分から甘えるなんて」
「……やる気充電中なの」


 そういってしがみ付くあたしをそっと抱きかかえ、何も言わずに背中を撫でてくれる。それがイリヤの優しさ。

 あぁ、あたし。その優しさを知ってしまえば、もう後戻りはできない。イリヤが居てくれないと……そこまで考えるあたしは重症かもしれない。